UPDATE 2010/07/22
ペンシルバニア州・フィラデルフィア
7月初頭から35℃以上の酷暑日が続いていたペンシルベニア州フィラデルフィアでは、各所で熱中症患者が続出していた。ところが熱波は収まる事を知らず、先週にはついに38℃に達してしまった。この記録的な猛暑に耐えきれず、サウスサイド地区で、なんと熱中症のエイリアンが、マーシー・ホスピタルに担ぎ込まれたのだ。
このエイリアンはバディーズピザの付近で倒れているところを発見されたものだという。第一発見者のトミー・フィオーリ君(10歳)が見つけた時には、エイリンアは、ディープ・ディッシュ・ピザの箱の上で眠っているように見えたが、よく見てみると、彼が病気だとわかったのだという。
驚いたトミー君は、「ピザの箱の上に病気のエイリアンが寝ている!」とママに言ったそうだ。しかし、ママは一笑しただけで、エアコンの前から離れたがらなかったらしい。騒ぎに気づいたトミー君のパパ、カルロ・フィオーリ氏が、野球のバットを持って現場に出ていき、事件が発覚することになった。
カルロさんは、最初この病気のエイリアンは、「ピザのトッピングのペパローニ・ソーセージが猛暑で腐っていたのか?」と思ったそうだが、エイリアンの息苦しそうな素振りと、酷い汗を見て「熱中症に違いない」と確信したのだと言う。
「エイリアンが熱中症で倒れている。急いで来てくれ!」とカルロさんが警察に通報すると、当初は信じなかった警察だが、念の為に駆けつけたパトカーによって、急遽エイリアンをマーシー・ホスピタルに収容されることになった。
フィラデルフィア保健局のスポークスマン、ジョン・グリマルディによると、「ヒトもエイリアンも、きちんと猛暑対策をしないと誰でも熱中症になってしまう。たっぷりと水分を補給し、ゆったりした薄手の服で、明るい色の服を着て、日中の活動は控えるようにすることです。また、エイリアンを含む全市民に、UVカットのサングラスを掛けることを推奨します」ということだった。
さらに「エイリアンの大きな目は、日差しのダメージを特に受けやすいハズ。サングラス無しにこの猛暑の中を歩くのは自殺行為です」と、サングラス無しで猛暑の街を歩いたエイリアンの無謀さに釘を刺すことを忘れなかった。
この騒動を受け、ナッター市長は、急遽フィラデルフィア宇宙生物学班を病院に派遣した。主任のドクター・ザク・コリンズによると、同班は、全力を尽くしてエイリアンの救護に当たっているという。また、フィラデルフィア市のエイリアン通信システム(ACS)を立ち上げて、市内全域に住むエイリアンに「迷子のエイリアンがいないか」と連絡を取ろうとしているそうだ。
「肝心なのは、これ以上の熱中症エイリアンを出さないこと。地元に住むエイリアンは全員、屋外やUFO内ではなく、一刻も早くエアコンのある建物に入ることです」とコリンズ主任は熱く語る。人道的見地から緊急避難用にエイリアンの避暑用に何棟かの公共ビルを開放する予定だという。
「フィラデルフィアは、兄弟愛がスローガンの市ですから、住民に対するケアは、たとえエイリアンであっても、一人残らず行ないます」と同主任。
一方フィラデルフィアに住む地元エイリアンの組合、フィラデルフィアE・T(PET)の代表は、その手のケアの必要はないと答えた。
「僕たちは何十年も前から、フィラデルフィア市立図書館をはじめとする市のデータベースを遠慮なく使わせてもらっているからね。避暑スペースなんて、とっくに確保済みだよ。それより、ぼくたちエイリアンは、人類のことを何でも知りたいし、何でも体験してみたい。熱中症になれる体験なんて滅多にないビックチャンスだね!」と、至って楽天的だ。
熱中症の主な徴候は、体力減退、食欲不振、吐き気、めまい、大量の発汗などとなっている。この病気が、エイリアン達が憧れるような気楽なものではないのは確かだろう。いずれにしても、フィラデルフィアの暑さは、さらに数日は続きそうだ。
保健局の職員は、エイリアン達に、カフェインとアルコールの摂取を控えるようにと話した。というのも、マーシー・ホスピタルの医師たちによれば、担ぎ込まれた熱中症のエイリアンは、酒臭い息を吐いていたそうだ。幸い、問題のエイリアンは、完全に回復するものと見られるが、発見がもう少し遅ければ命を失っていたのは確実だっただろう。