急激に旨さを増したロシアンビール。写真のバルティカ3はロシアナンバーワンビール。ノド越しスッキリ系のラガービール。けっこう旨いのが不味かった?
UPDATE 2012/12/14
ロシア・モスクワ
ボリス・エリツィン元大統領がアルコール中毒だったことでも知られる様に、ロシア人男性のアルコール中毒患者の激増ぶりは深刻な問題だ。実際、ロシア人男性の平均寿命は58歳程度!欧米諸国の男性の平均寿命より15歳も短い。今年10月現在70万人という急増中のエイズ患者の問題もあるが、実に年間4万人以上がアルコール中毒で死亡し、男性死因の34%以上がアルコール起因の病気や事故が原因なのだというからハンパじゃない。このままのペースでは、現在1億4300万人の人口は2050年までに1億人以下にまで落ち込むことになるといわれている。至急のアルコール・コントロールが必要だと政府が考えるのも当然だろう。
しかしロシアには過去に禁酒法を施行して国民の大反発を買い、国中が大混乱と陥った歴史を持つ。そう簡単に「んじゃ体に悪いから今日から禁酒ね」というわけにはいかないらしい。
そんな時に画期的な対策案が提出された。実はロシアでアルコール中毒が多いのは、旨いウォッカがあふれんばかりに存在するから。激寒の国ロシアの過酷な冬を乗り切る為には、体の心から暖まるアルコール度数の高いウォッカが不可欠だったのは最もな話。不景気な世の中で懸命に働くロシア庶民の男性から酒を取り上げるのも酷な話だ。というわけで考えられたのが国を挙げての「ウォッカの代わりになりうる旨いビール作り」だった!
2011年2月、ついにロシア連邦議会下院はビールをアルコール飲料として認める法律を可決した。実はロシアでは、アルコール度数10パーセント未満の酒は、食料品に分類されていたのだ。アルコール度数40%超えは常識のウォッカを、グイグイと飲み慣れているロシア人男性にとって、「ビールなんて酒じゃない。水みたいなもんだ」と食品扱いしていたのも無理ならぬところ。そのためか、ロシアではビール文化はお世辞にも発達せず、不味いビールが横行。これがなお一層ビールの浸透を送らせる結果になっていた。
しかし、旨いビールさえできれば、人々も「おっ!案外いけるねぇ、コレ!」とウォッカを控えめにしてノド越しスッキリのビールを飲むはず。これでアルコール中毒患者も激減間違いなし!とメドベージェフ大統領は自慢の法律に胸をはった。その特需を狙って、ロシアでは旨いビールが続々と発売されたのだ!
ところが、そんな鳴り物入りの法律が決議されて約一年。事体は思わぬ方向に進んでしまった。相変わらずロシア男性のウォッカ好きは変わらない。逆に旨いビールは女性達に大いに受け入れられることとなった。結果現在女性のアルコール中毒患者が激増中とのこと。事体はかえって悪化することとなってしまった…。世の中なかなか上手くいかないもののようだ。