虚偽報道騒動を受け憔悴しきった森口元教授。しかし問題の本質は、日本の劣悪な科学研究環境と、読売新聞の取材確認の甘さにあると考えられる。
UPDATE 2012/10/18
千葉県・市川市
読売新聞が伝えた、iPS細胞を使った世界ではじめての成果「iPS細胞からつくった心筋細胞を患者に移植成功」という報道を受け、盲従して各メディアが伝えたニュースが誤報だったとして、報道のあり方が問題化している。
口火を切ったのは、森口尚史氏の「快挙」をスクープとして一面で報じた読売新聞。それを鵜呑みにして伝えた共同通信とともに、両社は誤報を認め謝罪した。
現在この誤報を伝えた両社が先頭に立ち、森口元特任教授への非難記事が乱舞している。しかし、この風潮は本末転倒であるとWWNは感じている。
森口氏の肩書や論文、それに手術成果等「全てウソだった、ダマされた!」と大声で被害者面して非難釈明する読売新聞だが、そんなことは記事掲載前に大学や、共同研究者などに電話一本かけて確認すればわかること。泡沫の1研究者の白日夢を真に受けてスクープとし、それの掲載を認めた読売新聞の体質にこそ非があるとWWNは感じている。
さて、ここで一つ問題提示しておきたいことがある。現在予算が削減され、土俵際ギリギリの所に追い込まれている日本国内各大学の理系研究室。特にiPS細胞実験のように、成果がでるまでは数年~数十年を要する研究では、通常の方法では予算的に研究続行不可能。
そんな割に合わない作業を、科学界のワーキングプアといわれる、森口氏のような薄給の研究員達が支えている。多くの優秀な学者は設備や待遇の良い海外大学に引き抜かれ、国内の空洞化と陳腐化を止める事は極めて難しい。にもかかわらず、末端の研究員達には常に成果が求められ、それがないと契約更新もままならないのが現状だ。
そのため、多くの研究員が無理目の上増し報告や論文を提出し、研究続行と明日の食費を得ている現実が少なく無いことを知っておくべきではなかろうか?これは個人の保身の為だけではない。昨今の国ぐるみの予算削減のご時世で、文科省に予算を継続して出させるには、成果や希望的観測が必要不可欠なのだ。研究の灯を消さぬ為に、何とか成果を出してほしいとの大学側の想いも強いのだ!
今回の森口氏のフライング気味の成果発表問題は、日本の科学研究の底辺が断末魔の悲鳴をあげていることの一例として問題にするべきではないだろうか?大手新聞社が自らのミスを、一研究員の責任とし、人生を破滅に追い込む程追い込む姿に憤りを感じ得ない。
WWNは、この事件を日本の基礎科学研究の現場に対する環境待遇の改善への機会となる試金石だと感じている。このままトカゲのシッポ切りで、一研究者をクビにして日本の科学の現場の何が変わるというのだろう?
ところで、森口氏の才能をWWNは高く評価している!あの天下の読売新聞を100%納得させる論文は、SFと考えれば桁違いに優れた作品だ。誰もを「あり得るかもしれない!」と信じさせる近未来の発見といえる。この「あり得るかも」という想像の翼こそが、次の科学的大発見につながることを人類の歴史は証明している。SFと科学に共通するのは壮大な想像力から始まること。違うのは検証が在るかないかだけなのだ。
ロケット、クローン生物、テレビ電話。SF小説に登場する幾多の空想技術は、数十年後には現実の化学技術となる事を、多くの人々が自分の目で確認している。人間の進歩発展のためには、絶対に科学者から想像力を奪っては行けないのだ!
さて、今回の一連の騒動を受け森口氏は研究職から引退すると表明している。惜しい、実に惜しい。もし氏の決心が変わらぬのなら、WWNはぜひ森口氏にSF作家への転身をお勧めしたい。不自由な学会より、そのありあまる空想力を存分に発揮して頂けるだろう。そして、氏の空想の物語は、数年後には間違いなく現実のものとなるハズだ。何ならWWNに寄稿して頂いても良い。大歓迎である(笑)。
WWNは予言する。森口氏には偉大なSF作家になる才能がある。それは科学の目と壮大な空想力を持っているからである。発表の場さえ与えれば、数年後には必ず世界に夢を与える物語が完成しているはずだ。「iPSドクターM」なんてタイトルで、高額をまきあげるが、どんな難病でも直してしまう奇跡の腕を持つアウトロードクターの物語等いかがだろう?
大手出版業界の皆さんは、この有り余る才能に気づき早く契約に持ち込むべきだとWWNは思っている。以上経緯でWWNは森口元教授の論文を、本年度の全日本SF大賞に推薦した!
頑張れ日本の科学を支える研究者達!WWNは薄給低遇のなか、明日の日本の未来の為に、日々寝食を忘れ研究を続けて頂いている皆さんを心から尊敬し、応援している!