「スギ花粉の有害性が確認されました。花粉症じゃなくとも健康の為にスギ花粉は吸い込まない方が良い」と語る、ダイキン工業の新井潤一郎博士。
UPDATE 2012/02/28
東京・品川
1月20日、ダイキン工業は京都大学大学院工学研究科の高野裕久教授との共同研究で、「スギ花粉の人体への有害性発見」という驚くべき発表を行った。現在「国民の約3割がかかっている!」といわれるスーパー国民病である花粉症。その主因といわれる憎きスギ花粉!それが、アレルギーを引き起こす原因となるアレルゲンとしてだけでなく、根本的に人体に有害な物質を含むということが発見されたとなると一大事だ!
これは、今まで何も気にせず普通に花粉を吸っていた花粉症でない人々にも要注意が必要なことを意味する。WWN取材班は早速ダイキンの研究所を訪ねた。
まず最初に“花粉症”という病気をおさらいしておこう。毎年春先に飛び交うスギ花粉に鼻や目の粘膜が反応して、クシャミ鼻水に涙ボロボロ…。ティッシュを片時も離せず、労働意欲や外出意欲まで奪ってしまう嫌な症状が、典型的な花粉症。原因は花粉が鼻や目の粘膜に付着して起こる抗体反応というものらしい。簡単に言うと、体の中にある“抗体”というガードマン機能が、異物である花粉を体内から追い出そうと過剰反応して、あの不快で苦しいアレルギー症状を起こすということ。ここまでは皆さんご存知の通りだ。
ところが、最近はスギだけでなくヒノキにシラカバ、ブナにヨモギ、そしてコメと、原因となる花粉の種類は増える一方。一体いつのまにこんな事体になってしまったのだろう?スギやヒノキでできた家に住み、米を食べているはずの日本人がその全てにアレルギー反応を起こすとは普通じゃない。先ずはこのあたりを、ダイキン工業株式会社 環境技術研究所 主席研究員 医学博士 新井潤一郎氏に聞いてみた。
「今から30年くらいまえには、日本にはフェイフィーバー(花粉症)なんて存在しないっていわれていたんです。なぜ花粉症になるのかは、人間が体内に持つ寄生虫が減ったからとか、過度な清潔生活が原因とかいわれてますが、まだ原因研究が進んでいません。ただ、花粉症で反応するIgE抗体は本来寄生虫に反応する抗体です。それが寄生虫が減って役目を失ったため、他の異物で在る花粉に反応していることはあるかもしれません」
確かに今から30年以上前といえば昭和まっただ中。当時は小学校で寄生虫殺しの“虫下し”のチョコレートを配るのは普通の光景。子供達は、犬ネコが糞をしまくっていた砂場で、素手でトンネル掘って遊んだり、泥んこ遊びをしたまま駄菓子屋に直行!その汚れた手のまま“うまい棒”をほおばっていたものだという。
今の時代の潔癖ママが見たら気を失うような光景だが、そんな当時の「適度な不衛生生活が当時の子供達の病気への抵抗力を養っていた」という学者さんも数多いという。そう考えると、過度な清潔生活で寄生虫が激減し、職にあぶれた体内のIgE抗体が、大挙花粉退治に活躍しすぎているという説がわからないでもない。
「花粉のアレルゲンには、花粉の外皮に付属しているクリジェー1(Cryj1)と、花粉内部の細胞質クリジェー2(Cryj2)があります。花粉症の患者さんの9割以上が、クリジェー1、2両方に反応しますので、花粉症の発症予防には両方のアレルゲンを除去しなければなりません。その二つのアレルゲンを除去する為に、ダイキンでは光速ストリーマという一般のグロー放電の1000倍以上(摂氏10万度相当に匹敵)の分解能力を持つプラズマ放電を開発しました。今回の花粉の有害性発見は、そのストリーマ効果を調べているうちに確認されたものです」
10万度相当とはスゴイ!マジンガーZの必殺技ブレストファイヤーでも3万度。その3倍以上のパワーなら微小な花粉なんてイチコロだろう。別に調べる必要もなく粉々に分解されると思うのだが…?
「いや、そうはいきません…。つまり分解された花粉がアレルゲンで無くなっている、不活性化されていることが確認できないと意味が無いわけです」
確かに、ただ焼くだけじゃなく、焼いた花粉が無害になっていることが確認できて、初めて効果があったといえるわけだ。
「おかげさまで効果は絶大でした。たった1時間の照射で95%以上の花粉の不活性化が確認されました。ところが、その効果を調べて行くうちに、単なるアレルゲンとしてではなく、花粉そのものが直接人の細胞に有害に作用することが分ったわけです」
花粉自身が有害物質だった!それなら国民の1/3以上が花粉症になるわけです。ところで“有害”ってどういう意味なんでしょう?体や細胞に良くないってことでしょうか?
「分りやすく言うと、気管支系の粘膜細胞が死にます!一定量以上の花粉を気道上の細胞に接触させると炎症が起き、何割かの細胞が破壊されることが確認されました」
細胞が死ぬ!それは花粉を大量摂取したら人間は死ぬという意味でしょうか?死因が花粉というのは聞いたことがありませんが?
「いや、いくら花粉が体についても、吸いこんでも人間は死にません(苦笑)。あくまで粘膜細胞に対しての作用です。ただ呼吸器系の最初で最大の防壁で在る粘膜に穴があくということで、色々な病気にかかりやすくなるのは間違い在りません。これはバカにできないことなんです」
なるほど粘膜に穴があくとは、城に例えるなら、外堀を埋めるか城壁を壊されるようなもの。色々なバイ菌が体に攻め込みやすくなるのは当然だろう。
「これで花粉症という定義に2種類があるということを考えなければいけなくなりました。今まで花粉症=花粉アレルギーという図式だったんですが、花粉の有害性を考えれば、アレルギーでない人も多数花粉症となっているハズです」
スギ花粉が有害物質と分ったならば、花粉症でなくても吸い込まないに限る。しかし空全体を覆う花粉は、知らない間にどんどん吸いこんでいるハズだ。
「現状は、セルフディフェンスしか手は在りませんね。花粉の時期の外出時にはマスクをする。室内に空気清浄機を置いて頂くのももちろん有効でしょう。ただ、実は問題はさらに深刻なんです。なぜスギの繁殖地の山間部より都市部のほうが花粉症が多いか分りますか?」
もしかすると、田舎では清純で優しかった女の子が、都会に出てきた途端にイケイケの悪女に変わってしまうようなものでしょうか?
「イケイケの悪女は関係ありません(苦笑)。実はアレルギーを増強させるディーゼル排気粒子などによるアジュバント効果のせいなんです。都市部の上空では、花粉がディーゼル排気粒子などを吸着して有害性を増しているわけです。これが花粉症の患者数が拡大している要因ではないかと思われます」
アレルギー物質に加え、有害物質ハイブリットとなった極悪花粉!これはヒドい。まさに、健康の為に花粉の吸い過ぎに注意しましょう…。いや、花粉の吸い過ぎは、あなたの健康を損なう恐れが在りますということか!
実際、この有害物質に有害物質を加えた、ハイブリット花粉の人体に与える猛威はノーマル花粉の比では無いらしい。中堅製薬会社で有名な花粉症薬の開発担当する獣医師A主任は、株価への影響を考え、言葉を選びながらも、そのやっかいぶりを教えてくれた。
「正直ウチの薬は、研究所内での純粋培養のスギ花粉による臨床実験では抜群の薬効が得られているんです。しかし都市部で見られるディーゼル排気粒子などを吸着した花粉では効果が半減。逆に『効かない』という声をお客様から頂きます。これは辛いですね(苦笑)。そもそも花粉は受粉の為に、粘膜を突入して細胞内に入ろうとするものです。地球上の多くの生物が精子と卵子が受精する様子に見られる様に、卵子の粘膜を突き破らなければ仕事になりません。粘膜に穴を開けなければいけないわけです。ハイブリット花粉は、その開いた穴に、ディーゼル排気粒子などの有害物質を直接擦り込むようなもの。花粉のアレルギー反応を抑えただけでは症状が回復しないのは、その為だと思われます」
花粉が粘膜を傷つけ、ディーゼル排気粒子が傷口を痛めつける複合攻撃…。つまり傷口に塩…いや毒を塗るようなもの。都会の花粉はキビシいというのも納得。有害性を増したハイブリット花粉の恐ろしさはホンモノだ。
ともかく今回分ったことは、スギ花粉はアレルギーの原因物質だけでなく有害物質を含んでいるということ。そして山を下りて都会まで飛んできた花粉には、ディーゼル排気粒子等が付着し、さらに有害性を増しているということだ。こうなると花粉症であろうが無かろうが、スギ花粉を吸い込まないに限る。
「今回の実証結果は、花粉症について長年抱えていた疑問を解決する1つの道筋になるかもしれません」と新井博士は語る。
前出の製薬会社A主任によると「これほどの数の患者がいるのに研究者も少なく国の研究予算もかかっていない。本気で予算をかけ研究職を投入すれば、数年で道筋はつくハズ」とのこと。今回有害性が分ったんだから、そろそろ国も本気になってもいいのでは?と思うが、現状は自分で身を守るしか無い。
今まで「オレは花粉症じゃないから」と安心していた君も、今年からはマスクはマストアイテムとして準備が必要だ。いよいよ今年もスギ花粉本番の季節、今年は例年の7割程度の飛散量といわれているが、十分な注意を払って欲しい。
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