無断使用撲滅の為、古いトイレ前に設置されたステンレス製のピカピカの改札機。しかし、その効果は最悪の結果となってしまったようだ。
UPDATE 2012/02/14
中国・成都
中国のトイレと言えば、「紙のないトイレと、扉のないトイレのどちらがいい?」の笑い話で分るほど粗悪さで有名だったが、最近はその汚名を挽回するべく国を挙げて近代化が進んでいるという。そして、今年ついに世界初の「改札機付きトイレ」までが登場した。
話題になっているのは、中国四川省成都市成都駅近くにある公衆トイレだ。まるで駅の改札のように、粗末なトイレの出入り口に不似合いな、立派な改札機が設置されている。
その改札機の上には、「1回5毛(約6円)」の札が貼られている。更に、機械の後ろには、タダ入りを防止するべく「駅員」のような「便所員」が見張っている。トイレに入るには、「便所員」さんに料金を支払って初めて通行が許される仕組みだ。
中国ネット上では既に、「国がトイレで儲けるなんて、斬新なアイディアだ!」「スバラシイ!もっとも近代的なトイレだ!」「バカじゃないのか?世界一面倒くさいトイレだ!」「こんな機械にお金を使うなら、もっと柔らかい紙をよこせ!」など賛否両論で話題沸騰中。
しかし不思議なのは、我々日本人にとっても、有料トイレは稀な存在。なぜ「1元(約12円)のモノでも値切る!」といわれる金にキビシい中国で、改札機までついた有料のトイレが誕生するのか、現地のトイレ事情に詳しい中国ジャーナリストの戴世煜氏に聞いてみた。
「中国には、日本のコンビニみたいなトイレ付きの買い物施設が極めて少ないんです。しかも、立派なデパートでも紙が置いてあるトイレが少ない。だから街中で用を足す時は、紙付きの公衆便所を利用するのが一般的。ただ、その管理人で在る便所員による利用料金のピンハネが後を絶たない。そこでカウント数をごまかせない改札機を導入したということでしょう(苦笑)」
なるほど、中国らしい理由だが、トイレに改札まで付けてしまうと、「急用」時の利用者には不便ではないのだろうか…?
この疑問に対し、公衆トイレを管理する政府の責任者は問題無いと胸をはる。
「今まで、便所員による徴収料金の横領や、田舎から来た人々による『足し逃げ』事件が無数にあったから、我々は仕方なくこの対策を取った。この改札機の導入で不正利用は減り、トイレ混雑の緩和にも繋がる。しかも1日のトイレ利用人数の統計もできるから、まさに一石二鳥だ」と意気揚々に答えてくれた。
改札機を設置してからおよそ一ヶ月、すでに1日の平均利用者が1500人という驚異的なデータが発表されている。しかし、中国正月の帰省ラッシュ時には、3倍以上の1日5000人もの人々が殺到し、改札の前にトイレ待ちの長蛇の列ができたという。その列の多くの人々は待ちきれなくて、横の植木が無料公衆トイレと化してしまった。おかげで周囲は数万人分の汚物の沼が出現。今も周辺にはとんでもない悪臭が漂っているという。
早くて無料となれば、有料トイレより手近な木かげを選ぶのが中国人(苦笑)。政府のトイレサービス向上と効率的な料金徴収の目的とは裏腹に、公衆トイレ設置前の時代へ逆戻り。「早急に改札を撤去しないと駅前が汚物で埋まってしまう!」と駅周辺の住民の非難が高まっている。しかし、一度無料で用を足す味をしめた人々が、再び料金を払ってトイレを借りるとは思えず、日々増え続ける汚物に関係者は頭を抱えている。
売り上げランキング: 26