中国各地の路上で見られる倒れ込んだ老人の姿。しかし「大丈夫ですか!」とうかつに近寄っては行けない。これは老人達の仕掛けた罠かもしれないのだ!
UPDATE 2011/10/31
中国・上海
中国で貧しい老人達が行う路上サギが社会問題となっている。「美人局」ならぬ「老人局」と呼ばれるこのサギは、人の善意を悪用したもの。
ケガをして路上にバタリと倒れ込んでいたり、壁やフェンスに意識を失った様にぶら下がっていたりと、一見すると誰もが手を差し伸べずにはいられないような光景。しかし、「大丈夫ですか」と手を差し伸べたが最後、老人達が善意の人々に牙を剥くことになる。
「この人に押し倒されてケガをした!」と騒ぎ立て、賠償金をまきあげるというトンでもない罠なのだ。
中国衛生部(厚生労働省に相当する政府機関)は、この国中で大流行する老人による行き倒れサギを防ぐ為に、「老人が転倒した場合の対応マニュアル」を発表した。その内容は驚くべきモノ。
マニュアルによると、「もし目の前に老人が転倒している場合、まず老人を観察して、意識があるかを確認すること」、「もし意識が残っていれば、まず、転倒に至までの経緯を覚えているか、確認すること」、「救急車を呼ぶ時は、必ず老人の家族にも連絡を入れること。そして、必ず老人の家族と一緒に病院まで搬送し、検査を受けさせること」と、ここまでは理解できる。
しかし、最後に強調されているのは、「その場に第三者がいない場合は、絶対老人に触れてはいけないこと」や「できれば、カメラやビデオで救助過程を収めること」のような「救助者への保護措置」のための項目だった。
このマニュアルが、老人を守る為ではなく、善意の救助者を守る為のものであることがはっきりと分る。
この「老人局」詐欺について、中国の社会問題に詳しいジャーナリスト趙雲龍氏は、「中国人は、因果関係を強く意識する民族。自分がやっていないのに、わざわざ被害者を助けるのは、不自然な行動パターンととらえられやすいですね。ですから老人が騒ぎ立てると、周囲から事件の当事者と見られて被害に遭いやすいんでしょう。特に最近は、お人好しな日本人観光客を狙っているケースも増えているので、くれぐれも要注意です!」と語っている。
なお、政府の交付した前代未聞の老人サギ対策マニュアルに対してネットは大炎上!
「年寄りが倒れた場合、じっくりと観察し、じっくりと考え、じっくりと躊躇して、死んで動かなくなってから電話しろということか」
「手元にカメラがなかったら、老人を見殺しにしろということか」
「老人を見たら詐欺師かと疑わないといけないなんてまったく、悲しい社会だ」
などの批判が相い次いだ。
ところで、この騒動について、WWNの単独取材に応じてくれた衛生部幹部のX氏は、マニュアル作成の「恐るべき本当の理由」をこっそりと教えてくれた。
「実は、このマニュアルは重大な国策なんだよ。現在、中国は凄まじいスピードで高齢化が進んでいる。現状でも65歳以上の高齢者が、1億5000万人もいるが、まだまだ序の口。2050年には重度の高齢化の段階に入り、高齢者の人口は4億3700万人と全人口の30%以上を占めるようになると予測されている。この大量の老人が国にとって大きな負担になるのは間違いない。ここで名案が浮かんだんだよ。高齢者は毎年約3割が転倒すると言われている。つまり、今でも年間 4000万人以上が1度は転倒事故を起こしているということ。そして、老人は転ぶと、骨折、脳出血、脊髄損傷などが起こりやすい。その場にほって置けば置く程死ぬ確率は高まる。つまり……名案だろ(笑)」
う~~~む、恐るべきは老人達か政府か…。恐るべし、中国!いや、恐るべし、中国の指導者たち!若い間は国の為に使えるだけ使って、「社会の負担」の年寄りになったとたんに切り捨てていく。しかも、国民の手を借りて、国策として堂々とやるなんて!
中国のお家事情はともかく、老人達が、お人好しな日本人観光客を狙い撃ちとは恐ろしい話。くれぐれも中国を旅する時は路上に倒れた老人達に注意して欲しい(苦笑)。
日本医事新報社
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