半世紀以上の地道な研究の末、人類滅亡の日を導きだした!とするハロルド・キャンピング氏。しかしその終末の日は5ヶ月延期となった。
UPDATE 2011/06/05
ノースカロライナ州・ローリー
「2011年5月21日に人類が滅亡する!」
希代の予言者とされるハロルド・キャンピング氏の同説を聞いて恐怖に身もだえた人々は世界中に一体どれくらいいたことだろう…。ともあれ、裁きの日は訪れ、そして何事も起こらないまま去って行った。この現実を我々は、ただ素直に喜んでいれば良いのだろうか?
ノースカロライナで今も滅びの日の到来を信じ、警告し続ける伝道師達にいわせると、そうはいかないようだ。
人類滅亡を見越していたアメリカ全土の伝道信者たちが裁きの日の訪れが無かったことに肩を落とし、自身の生存の意味を見出そうと努めているとき、キャンピング氏は、自身の終末論の予言を「恐怖は既に始まっている。2011年5月21日の人類滅亡説に反し、我々はすべて生き残ってしまった。しかし、人類の運命は変わっていない。滅びのシナリオは何も変わっていない。5カ月間延びただけだ。地球は10月21日に、抹消されるだろう」と発表した。WWNが聞いた、その“修正予言”の要旨は次の通りだ。
ノースカロライナに住むハロルド信者の一人、マリー・エクスレイ婦人は本当は夫婦待望の子供を作りたかった。しかし、その夢を人類の未来のためにあきらめたのだ。32歳の元軍人である彼女は、わずかな可能性であっても人々を守る使命感に燃えている。地球と人類の運命が残りわずかで、この世の終わりがもうすぐ来るという神のお告げを人々に広げるために時間を費やしていた。
エクスレイは、教会とは距離を置いたキャンピング氏が主宰する独立系の聖書研究団体に所属していて、現在ラジオ放送やウェブサイトを通じて啓蒙活動をしている。(彼らの聖書の解釈によると、世界の終わりは2011年5月21日に始まるらしい)
結果的に、5月21日は最後の審判の日、聖書でいう“キリストの再臨と裁き”の日にはならなかった。むしろ、今まさに“終わり”が始まったところなのだ。だがこの裁きがいつ終わるのかと怯えて暮らす心配は無用。それは間もなく終わるらしい。彼らの説によると、遅くとも今年の10月21日までには…。
彼らは、ビルボードやバス停のベンチを使って人々に危険の到来を知らせている。そして、ボランティアとキャラバン隊を組み、街角で熱心にパンフレットを配りながら各地を移動している。
ブリッジポート(コネティカット)からリトルロック(アーカンソー)にかけての街角は、現在終末の訪れを知らせる彼らの不吉なメッセージの看板で一杯だ。そして、彼らは、その告知活動をアメリカだけで行うことに満足せず、ニュースを広めるために、ラテンアメリカやアフリカでもキャラバン活動を行っている。
「多くの人々は『世界の終末がやってくる。皆死んでしまうなら、それまでパーティをし、酒を飲み、セックスに興じよう』と思うかもしれません。しかし、我々は神に、『人々に警告しなさい』と命じられているのです。もしかして、警告することで人類のうち何人かが生き延びる事ができるかもしれませんから」と、エクスレイは熱く語る。
昨年8月の終わりに、エクスレイはコロラドスプリングズの自宅を後にして、オークランドにあるラジオ局「ファミリー・ステーション」に向かった。そこはキリスト教系の宗教放送局で、本プロジェクトのリーダー、キャンピング氏が運営するものだ。彼はここで聖書を読み取った5月21日世界終末論を呼びかけていた。
エクスレイは、神のお告げを伝えるべくキャラバン隊を組んでいる。街から街へ、彼女の従軍経験が生きた支援活動といえるだろう。
現在彼女はノースカロライナにいる。しかし間もなく彼女が最終的に支援したいと望むイラクに旅発つだろう。
「私はもう2度と我が家には戻れないでしょう。私たちにはもう時間がないのよ」と彼女は語る。
一方一人残されたエクスレイの夫は、日々飲んだくれて彼の残り少ない人生を売春婦に注いでいる。彼にとって、既に世界の終わりは訪れているようだ。
キャンピング氏のメッセージを聞いた誰もが、エクスレイのような劇的な生活の変化を起こしているわけではない。多くの信者が、それまでどおり何も変わらない日々を送っている。だが、皆それぞれの方法で精一杯キャンピング氏の予言を伝えようとしている。
ノースカロライナ州のローリーに住むキャンピング信者、エリソン・ワーデンは、ビルボードやポストカード、そして人気のウェブサイトなどのメディアを駆使して終末の啓蒙活動を行っている。
彼女のクルマ全面に書かれた終末メッセージの感想を聞かれ、29歳のOLは一笑に付し、以下の様に語った。
「あれは明らかに敗退的なメッセージだわ。私たちは世界の人々が、これらの言葉をこの街の人々の総意メッセージだと捉えないことを望んでいます。これはハロルド・キャンピングと彼の信者の言葉なんです。私たちは、神様の教えは、人々が自分自身で聖書の中から探すものだと思っています」
現在89歳のキャンピング氏は、聖書は基本的に、いつ何が起こるかを、正確に説明している宇宙カレンダーだと信じているようだ。とはいえ彼はもう89歳。既にやりたいことをすべて終えている彼は、この世の終わりが来ることをさほど苦にしていないのだ。
そもそも定年退職した元土木技師であるキャンピング氏の滅亡説の計算がどれほどあてになるというのか?予言は、すべて聖書の解釈に忠実に基づいているが、1948年のイスラエル建国のような出来事を、裁きの日付を確認する象徴として「疑惑の影を過ぎて、5月21日は裁きの日となり最後の審判の日となるだろう」と読み取っている。
キャンピング氏によると、この世が終わる瞬間、他の誰もが地球上で苦しみの中に身を置く間、降臨を信じた者だけは天に召されることになる。そしてその時こそが10月だと信じているのだ。
「もし5月21日を過ぎても我々が地球に生存するなら、それは、救われたのではなく、10月21日に死ぬとことを意味する」とキャンピング氏は語っている。
熱心に啓蒙活動を続けるワーデンは「神の言葉が誤っていると?真実ではないというのですか?いいえ違います」とキャンピング説への信頼を崩そうとしない。
ところで、キリストがこの世に戻り、歴史に終わりをもたらすであろうという終末信仰は、1世紀から延々と続くキリスト教信仰の基本要素の一つであり解釈ではある。新約聖書の最後にあるヨハネの黙示録には何世紀もの間、クリスチャンを鼓舞してきた明確な復活の言葉で締めくくられている。つまりキャンピング氏の説は何ら目新しいモノではないということだ。
人類滅亡の明確な日時を示さないイエスキリストの弟子、マークとマシューの福音の中にある神の言葉に留意しながら、いくつかの異端派の教会は喜んでキャンピング氏の終末日を支持した。
キャンピングのような終末予言で、歴史上もっとも知られている例の一つはウィリアム・ミラーによるものだ。ミラーは、1844年10月22日の終わりに予言し、その後にセブンズデー・アドベンテイスト教会を設立した信者の間で、「深い失望」として知られるようになった。
バイヨンヌ(ニュージャージー州北東部の都市)のロン・ハーデスキーは、2004年2月27日に世界は終わるだろうと再び予言した。しかし世界は終わらなかった。予言の外れた事を妻に非難されたロンは、彼の妻を聖書で殴り殺した。彼はそうして世界ではなく、彼の人生に終止符を打っている(苦笑)。
アメリカで多数派を占めるプロテスタント信者は、神の言葉であり予言である一種のパズルのような難解な書物=聖書を目にする度に、いつかこの世の終わりが来るのでは?と感じている。至福千年を研究するロヨラ大学のキャサリン・ウエシンガー教授もまた、ヨハネの黙示録(新約聖書中の一種の予言書)を信じている一人だ。
「社会で困難なことが起きているたびに、これらの終末予言は世間を騒がせ続けるでしょう。今も社会には多くの不安があります。ただ、これは、偶然の出来事ではなく、神のお与えになった試練なのです」と語る。
しかし、キャンピング信者は、的中しなかった過去の予言が、今回の終末予言告知に何ら影響を及ぼさないと断言する。
eバイブルで働くリス・ミーキャンは「それは昔、何度も飛ぼうとして失敗していたライト兄弟に、もうトライすべきではないといっていた人々と同じです」と語る。
ともあれ、キャラバンを続ける信者達は「もしあなたが、私たちのことをクレイジーだと言いたいのなら、どうぞそう言い続けてください。ただ、10 月21日に本当に神の裁きが訪れたときには、あなたは私たちが正しかったと悟って、我々に感謝するでしょう」と今日もパレードを続けている。
しかし、終わりの日が簡単に5ヶ月延びたキャンピング信者達のドタバタ劇を笑ってばかりはいられない。我が国では国を代表する現首相と前首相の直接会談ですら辞任時期の認識に6ヶ月もの差が出るのだ。
5月の人類絶滅が10月に、たった5ヶ月延びたところで、我々日本人は、彼らをペテン師だと呼ぶ事はできないのかも知れない。
ヴォイス
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