見事な仕上がりを見せるタトゥーブタ。得意げな顔をしている様に見えるが、本人(本ブタ)が望んで入れたのではないのは確かだ。
UPDATE 2011/03/04
中国・北京
中国、北京郊外にある養豚場が、世界の論議の的になっている。話題の主は、そこに暮らすブタ達だ。北京郊外順義区の農場で飼われているこれらの豚は、ベルギー人芸術家ヴィム・デルヴォイエ(Wim Delvoye)氏(46歳)とそのスタッフたちによって、背中に人物、動物、神話、ブランドマークなど、ド派手な図案の入れ墨を入れられている。
ヨーロッパでは、デルヴォイエ氏のタトゥー入り豚皮が大人気で、中には20万ユーロ(約2280万円)で取引されている作品もあるという。また、地元中国では、皮だけでなく、生きている豚も、まるでスターのように展示会やショーに借り出されたりしている。
おかげで、そのスターブタたちは、普通の豚よりはるかに優越な生活をおくっているという。普通の養豚場だと一人の飼育員で何百匹の豚の面倒を見ているが、デルヴォイエ氏の農場では、一匹の豚に2~3人のスタッフが24時間ほぼ付き添いで世話をしている。太らせ過ぎず、痩せすぎないため、飲食コントロールから、適度のお散歩、1日1回以上のお風呂、脱毛のケアまで、まるで豚界のプリンスのようだ。
ブタ達が規定の大きさ(重さ)まで成長し、そろそろタトゥーを入れていく時期になると、デルヴォイエ氏とチームスタッフは24時間ノンストップで作業を行う。一頭のブタのタトゥーを完成させるには、簡単なものでも1週間前後かかると言われている。
このタトゥー豚の作品を作り始めた頃のデルヴォイエ氏は、著作権の問題で、LV社やシャネル社に提訴されそうになったこともあったが、現在は逆にブランド会社側から直接オーダーしてくるケースもあったりと、すっかり売れっ子になってしまったようだ。
ところで、ブランド品に使う素材といえば牛革がスタンダードなイメージだが、なぜデルヴォイエ氏が豚革を選んだのだろう?
その理由は、痛みに敏感で力強くて暴れると手がつけられない牛にくらべ、豚は痛みに鈍感で忍耐力もあって大人しいからタトゥーを入れやすいのだという。確かに、豚が人蹴ったりかじったりするのをあまり聞いたことない(笑)。
また、わざわざベルギーから遠い中国で農場をはじめた理由としては、ヨーロッパに比べて、中国人の動物保護意識が圧倒的に低いからだという。
確かに中国人は「四つ足のモノは、イスや机以外なんでも食べる人達」と呼ぶ人がいる様に、欧米では食用にしない猿や熊、犬ネコでも平気で食べる。そんな中国人にしてみれば、たかが豚の背中に絵を描くぐらい何の罪の意識もないということらしい。
さて、されるがままにタトゥーを入れられている豚達。一般の豚より大切に優雅に育てられていることは認めるが、決して幸せそうには見えない。と殺後ならともかく、生きたままキャンパスにされるのは、あまりに非人道的…、いや非ブタ道的と思うのは我々だけだろうか。2000万円以上というスーパープライスがつくブランドブタの末路を考えると、ちょっと切ない気がする。
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