レジ横の「ご自由にお使い下さい」の1円玉や、募金箱の1円玉は中国人にとって宝の山。1000円札を出して1円玉を全て両替して持ち帰る猛者もいたとか(苦笑)。
UPDATE 2011/02/04
中国・上海
「アルミが足りないアルよ〜!」中国各地でそんな悲鳴が聞こえ始めたのは、今から3年前、2008年の北京五輪に向けて国中が突貫工事を行っていた頃からだった。怒濤の経済成長と、上海万博という巨大国際イベントに向けての建設ラッシュ、さらに間髪入れずに社会インフラの整備計画を発表。
あれよあれよという間に、アジアの巨人から世界の巨人への道を邁進していく姿は世界各国に驚嘆を与えた。
圧倒的な人間の数と、無尽蔵とも思える埋蔵量を誇る石炭エネルギー。もはや成長は誰にも止められない…。誰もがそう思っていた。
ところが、そんな中国にもアキレス腱が在ったのだ。それはアルミ資源の調達だった。
現在、建築、各種工業を始め、多くの産業にとってアルミは不可欠な材料。その調達が成長に追いつかないというのだ。
そこで抗日運動家たちが思いついたアルミの調達先が日本。しかも1円玉の略奪なのだという。
「日本に行けば良質のアルミがいくらでも手に入る。しかもこの1円作戦が日本政府を困らせることにもなる…」という深謀が隠されているというのだ!
この抗日運動というにはあまりにセコい活動の真意とはなんなのだろう!?
何より、ここで疑問が在る?中国と言えば、アルミの原材料であるボーキサイトの大産出国。オーストラリアに次ぐ3000万トン規模の産出が在るはず。わざわざ、チッポケな1円玉なんか集めなくても大丈夫だと思うのだが…。
先ずは、この辺りの事情を、中国経済に詳しい中国人ジャーナリストの程健軍氏に聞いてみた。
「確かにボーキサイトは大量に産出しているんです。しかしアルミの製造には膨大な電力を使う事はご存知だと思います。もちろん中国国内でも急成長でアルミの生産量は増えているんですが、供給できる消費電力を考えると、必要量に全く追いつかないのが現状なんです」
なるほど。資源は十分在っても生産量に見合う電力を供給できないと。逆をいうと、それほどの経済成長があるということかも。
「正直、現在の成長が続く限り、当分需要に生産が追いつく事は難しいでしょうね(苦笑)。昨年の中国国内の自動車販売台数が1800万台を越えた事に象徴される様に、現在中国は世界最大のアルミ消費国なんです。今年は需要の伸びが鈍化するといわれていますが、それでも15%以上の需要の伸びがあると予測されています。さらに中国全土に拡大しつつ在る、新幹線網に使用される莫大な数の車輛も全てアルミ製に決まりました。他にも、いくらでも使い道が在りますからね」前出程氏
確かに軽くて錆びにくい。丈夫で安いとなれば、使いたくなるのも当然。僕たちの回りにもパソコンやデジカメ、テレビに自転車と、アルミが使われていない工業製品を探す方が難しいくらいだ。というか、その製品の多くが中国製だったりもするし(苦笑)。
でも、アルミが必要だと言うことは分かったけど、1円玉を集めたくらいじゃ、何の足しにもならないと思うんですが…。
ここで世界の流通情勢に詳しい大手証券会社のA部長に話を聞いた。
「いや、そうとも言えないかも知れませんよ。中国の今年のアルミ消費量は2000万トン!世界全体の消費量の半分近いだろうといわれています。日本の消費量約330万トンと比べると、いかに圧倒的な需要が在るかを理解できます。ここで問題なのが、中国のアルミの生産力の限界が約1500万トンしかないこと。つまり各種産業をストップさせない為には500万トンを、どこかから調達しないといけないわけです」
う〜ん、でも日本にそんなに1円玉が在りましたっけ(苦笑)?
「もちろんその全てを1円玉でとは思ってないでしょう(苦笑)。ただ抗日運動と考えるなら、狙いと意義は鋭いものが在るかも知れません。現在日本市場では、アルミの無垢丸材ならキロ750円以上はします。となるとグラムあたり0.75円、ここで何か気づきませんか?」前出A部長
あれ、1円玉って確か1グラム…。案外原価高いんですね。
「実は1円玉は日本の通貨の中で一番原価が高いんです。ズバリ1円玉1枚作るのに材料と工賃で3円かかると言われています」前出A部長
それって、作れば作る程3倍の赤字になるってことですか!?
「1万円札の原価が23円程ですから、いかに1円玉の製造が割に会わないか分かってもらえるでしょう。圧倒的に赤字です。ですから、外国人に大量に1円玉を持ち帰ったりされると非常に苦しい。1円作戦が、優良な資源を安く手に入れて、相手国を苦しめる方法と考えれば、かなり的を得ています。金属としては100万円分あつめたところで、たった1トンで大した事は無い。でも、日本政府には200万円のダメージを与える事が出来ますからね」前出A部長
ゲゲッ、セコいと笑ってた一円活動が、それほど高等な戦略だったとは知りませんでした!一体誰が考えたんでしょう。
「実は、中国では既に硬貨を地金に変えて使った前例があったんです。現行の中国の1元や5角硬貨は鋼鉄をメッキしているだけなんですが、その下の1角硬貨はアルミ合金製。この1角硬貨が、北京五輪の建設ラッシュ時に、材料用に流用されて完全に街から消えたことがあったんです。1角硬貨のサイズは、ちょうど1円玉の20ミリより1回り小さい19ミリですからね…」前出程氏
既にお金を地金に変えていた前例があった(苦笑)。
「その時は緊急回避的な措置だったんですが、後ほど国が困る事になるから止めようと動きは治まって行ったんですが…」前出程氏
日本を困らせるには、ちょうど良い方法だと…。
「そういうことでしょうね。今もネット上に『日本には、レジでタダで1円玉がもらえる店が多数在るらしい』という情報や、『1円玉で9円お釣りをもらう為のテクニック』等が掲載されています。それに、彼らが本気になるのは、日本の1円玉が純アルミの『アルミ100%製品』だということも大きいですね。中国が節電できて、純度の高いアルミを安く手に入れられて、日本が困る。一石三鳥の妙案だというわけです」前出程氏
あきれてモノも言えません(苦笑)。ともあれ、アルミ缶回収のおっちゃん達が外国人に襲わて、集めた缶を丸ごと奪われたという例もあります。こんな犯罪も需要在っての事だろう。何とか無防備な1円達をテロリストから守る方法はないものか…。
この際日本政府に提案したい。1円作るのに3円もかかる1円玉は、原価の安い鉄貨か紙幣に変えちゃうのはどうだろう?案外それが財務改善できて日本の資源も守れる一石二鳥の解決策だと思うのだが。