UPDATE 2011/01/05
ドイツ・ベルリン
ドイツのアンティーク鑑定番組「キッチュかアートか?」に、1冊の古いスクラップブックが持ち込まれた。その本は、番組始まって以来のレアアイテムだったのだ。
番組に持ち込んだのは、アントニア・ステイングローバーという女性。革のカバーに覆われ、テープで閉じられた、ごく普通のスクラップブックは、その後ドイツ中に大論争を巻き起こす事になる。
彼女は、その本を鑑定士に渡すときに、「この本をこれまでに一度も開いたことがない。子供の頃から、家族全員から絶対に秘密の場所に保管しておくようにといつも言われていました。私の祖先は、私が皆さんに見せていることを知ったら、きっと私を殺しますね(苦笑)。彼らはこれをずっと秘密のままにしておきたかったんだと思います」と語った
一体、その本の中には何が隠されているのか?そして、それは価値がある物なのか?子供の頃からずっと、謎のスクラップブックについて考えていた彼女は、ついに番組で鑑定すを受ける決心をしたのだ。
「私はこのスクラップブックの中身を知りません。正直中身が何なのか、まったく予想がつきません」と語った。
しかし数秒後、彼女はスクラップブックの中身が、自分の想像以上の衝撃的なものである事を知ることになる。なぜなら、そのスクラップブックは1930年代のナチスを賛美した記事や写真を徹底的に集めたものだったからだ。
しばしの沈黙の後、本の鑑定を行ったデイトリッチ・アルマンは「これはヒトラー愛好家にとっては非常に魅力的で珍しい作品です」と語った。
この本は、ナチス支持者でアマチュア・スクラップ・ブッカーだったスティング・ローバーの大叔母である、ウルスラ・ハーバーカンパ―の所有物だった。彼女は1932年から1938年にかけて、この作品を作り上げたようだ。実に6年間かけて作られた作品には、終始ヒトラーへの尊敬心が満ち溢れている。
この鑑定結果を聞き、この本を持ち込んだステイングローバーは「本の中身を知ったとき、とてもショックでした。まさか中身がこんな内容だったなんて、まったく思わなくて…。ショックで言葉がでないです。これが珍しい品である事は喜ぶべきなのかもしれませんが、本当に私が知りたいのは、私を永年悩ませたこの本に、価値があるのかないのかということです」と彼女は語った。
この貴重なスクラップブックは、大方の予想価格を大幅に下回る150~300ユーロ(約16000円?32000円)と鑑定された。
鑑定士のアルマンは「歴史的に非常に価値ある資料ではあるけれども、大半の人は欲しがらないものですから」と語った。
博物館や戦史研究者、ナチス信奉者にとってはいくらお金を積んでも欲しい資料だろうが、一般の人々には逆に忌み嫌われる品という結果は、ステイングローバーの永年の悩みの解決になるどころか、かえって悩みを深めてしまったかもしれない。
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