北京市内を走る地下鉄の車内風景。転落防止のため、窓は全開にならない。その換気の少なさが事件を加速させたのか!?
UPDATE 2010/11/26
中国・北京
上海万博も終わり、北京五輪から続いた国家的な巨大イベントラッシュも一段落、街に平静を取り戻したかに思えた中国だが、そうもいかないようだ。
イベント特需が去り、数百万人規模といわれる失業労働者達のいらだちは、既にピークに達しているのかも知れない。
先週17日、北京市内の朝7時すぎの地下鉄車内で、「足が臭い!」という理由で4人の男性が一人の男性に殴りかかり、男性が死亡する事件が起こった。
同じ車両に乗り合わせた女性乗客によると、死亡した男性が車両に乗り込んだ時、「あまりの臭いに皆目を開けていられなかった」という。多くの乗客がその男性から離れようとしたため、男性の周りにできたスペースに男性が座り込み、靴を脱いだのだという。その途端、臭いは一気に激しさを増し、車内には悲鳴にも似た絶叫がこだましたのだという。
耐えかねた周囲の男性達が「足が臭い!」「靴をはけ!」と注意したが、男性が無視し靴下まで脱ごうとした為、周囲の4人が殴り掛かり、男性はそのまま動かなくなったという。男性は次の駅で、靴とともに外に投げ捨てられたが。あまりに臭いが激しかったため、誰も近寄ろうとしなかった。
約1時間後、臭いの苦情で駆けつけた公安が、駅から追い出そうと近づき、はじめて男性の死亡を確認したもの。
女性乗客によると「あのまま靴下まで脱いでいたら絶対に死人が出ていた。4人の男性達は悪くない。乗客の命の恩人だ」と語っている。
まさか、足が臭いという理由で殺人事件にまで発展するとは?と首を傾げたが、中国では珍しい事ではないのだという。
中国人ジャーナリストの戴世煜氏によると、「中国では足の臭いや口臭などの臭いが原因の殺人事件は珍しい事ではありません。2007年には上海市内で『干している靴下が臭い』と建設作業員の寮で口論となり、同僚を絞殺する事件が起きています。昨年も内蒙古の女子学生同士が、互いの『足が臭い』と殴り合いのケンカになり、加勢した6人とともに大乱闘となり2名の重傷者を出す事件が起きています。水の少ない中国内陸部では風呂に毎日入る習慣が無いのも確かですが、民族間で香辛料の嗜好もかなり違います。ある民族には良い匂いと感じる物でも、別の民族には堪え難い悪臭と感じる事も多いようです。最も、足の臭いを好む民族はいないと思いますが(苦笑)」
しかし、前出の戴氏によると、この悪臭殺人の本質は、「たかが臭いでも人が殺されるほど、人々が社会的にいらついている事にある」
日本人が好む松茸の香りも、中国人にとっては悪臭に感じるのだとか…。このイライラのトバッチリが日本人に向かない事を祈るばかりだ。