死亡事故が続出する中国の炭鉱。経済優先、人命軽視の現場に、チリの救出劇の感動は、どう伝わるのだろうか。
UPDATE 2010/10/18
中国・新疆ウイグル自治区
チリ落盤事故での鉱山労働者33名の救出劇は世界中の感動を呼んだ。一方世界最大の石炭産出国である中国では、炭鉱事故数とその死亡者数が減少し、人々の絶賛をあびている。
中国国家炭鉱安全監察局の趙鉄錘(ジャオ・ティエチュイ)局長は、危険性の高い小規模炭鉱を閉鎖し、違法操業を行っていた炭鉱の取り締まりを強化するなど一連の安全対策を実施した結果、昨年の炭鉱事故による死者は、たった2631人となり、前年比20%減少したと、その成果に胸を張った。
この死者数減少には、関係者の不断の努力があると思われる。例えば、先日、新疆ウイグル自治区・阜康(ふこう)市にある神龍炭坑で起こったガス爆発事故では、83人が死亡したが、4人が見事に救出されている。この炭坑は今年1月の時点で安全体制に不備があることを理由に、「炭坑企業安全生産許可証」の発行を差し止められていたが、なぜか「販売許可証」は交付され事業は続けていた。そのため、事故後、経営者は真っ先に逃亡し、救出作業は放棄されていた。残された家族や友人達の危険をかえり見ない必死の救出作業が、奇跡を生んだのだ。この状況で生き残った4人は称賛に値する。
「事故が起こると、まず助からない」と言われる、一見無責任に見える中国炭鉱の現状だが、2006年の年間死者が4746人であったこと考えると、事故は大幅な減少傾向にあるといえる。この原因は、多くの炭鉱が落盤事故で崩れ閉鎖され、操業する炭鉱数が減ったため。このペースで事故が続き閉鎖炭鉱が増え続ければ、年間死者数が2000人以下となることも夢ではないかもしれない。
ただ、広東省興寧市大興炭鉱の出水事故で123人が死んだ事故が一般には報じられなかった様に、中国では小さな事故は表に出ない傾向が在る。実際の死者数は数倍と言う関係者の証言も在る。
実際、私営の炭鉱であれば、死亡事故が起こっても5万元(約60万円)程度で手早く示談を済ませ、事故が無かった事にされる事も多いという。マスコミとしても、炭鉱事故は、あまりに数が多すぎて、ニュースとしての価値は無いという。世界中が注目したチリの炭鉱労働者救出劇とは、あまりに違う対応だ。
では、中国の炭鉱関係者は、今回のチリの救出方法を参考にし、事故を減らす決意を固めていないのだろうか。実際、中国の炭鉱経営者は、時間と金のかかりすぎるチリの救出劇に批判的だ。
ある鉱山経営者の1人は「中国なら事故の解決に70日もかからない。1日で十分だよ。一番早い解決方法は、坑道に水を流し込む事だ。事故で水が出るのは良く在る事。16億円も救出費用をかけなくても、33人死亡なら、一人当たり20万元(約280万円)の賠償金ですむ。全部でたった9200万円ほどを払って、後腐れ無く解決だ。チリは金と時間の使い方を分かっちゃいないね」と笑った。
この現状に対し中国人ジャーナリストの戴世煜氏は「中国では、10人以上死亡の事故が「特大事故」と定義されるんですが、それ以下の事故が報じられる事はあまりありません。しかも危険を承知していても、炭鉱作業員の給料は、農作業の収入のおよそ5倍、都市部工事現場やレストランのアルバイトの2?3倍もあるため、労働希望者は後を絶ちません。経営側も、いつ石炭から石油やエコ資源が燃料の主流になるかも知れないという危機感から、『石炭の需要があるうちに金に換えたい』という思いが強く、無理を承知で採掘効率を上げるのです」と、現状の急激な改善は難しいと肩を落とした。
チリで鉱山労働者33人の命を救った救出カプセル「フェニックス」の2号機が10月19日より上海万博で展示されるという。さて、このカプセルの意義を中国の人々はどう感じるのだろうか。
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